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東京都高等学校国際教育研究協議会


1996/7/25〜8/4タンザニアJICA専門家及び青年海外協力隊の活動視察

                          (都立 篠崎高校 斉藤宏)


 高校教師派遣研修とはJICA(国際協力事業団)が、政府のODAの中で世界各地で行っている技術協力のありのままの姿を高校教師に現地で見てもらい、その内容を開発教育を通じて高校生に浸透させる事を目的とするプログラムである。この協力機関として私達、東京都高等学校国際教育研究協議会が加わっている為、毎年数人の派遣者を推薦し送っているのである。

JICA研修所での事前研修
 人数は毎年、3グループ30人の派遣で、3カ所に分かれて訪問する事になっている。
 今年は、タンザニアとモンゴルとホンジュラス、グアテマラの3グループで実施された。都高国際研からは斉藤がタンザニアグループに参加した。以下にその研修報告のダイジェスト版を掲載する。


タンザニア研修コース




アフリカ一高いキリマンジャロ山




7/26(金)アフリカへの第一歩、ケニアナイロビ空港到着

今回の旅程では、タンザニアのダルエスサラームに直接入るのではなく、隣の国ケニアから南下し陸路ダルエスサラームを目指すルートである。ナイロビ空港はナショナルパークに接していて、着地した飛行機の窓から滑走路を滑走中に野生のシマウマやガゼールが見える環境で、いよいよアフリカに来たという実感がわいた。サファリ用の天井が開く日本製のジープに乗り換えてどこまでも見渡せる赤茶けた大地とサバンナ林の間を通るまっすぐな舗装道路をタンザニア国境に向けて走る、時々キリンが草を食べている姿が見えてますますこの旅行への期待が膨らんだ。

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7/27(土)午前  ンゴロンゴロC.A(コンサルベーションエリア)

 今回の、最初の訪問地ンゴロンゴロCAは巨大な火山の火口が陥没してできた地形で、外輪山に守られた自然の楽園といったすばらしい環境で、国土の20パーセントといわれる国立公園のカテゴリーの中で、唯一住民と動物が共生するエリアとして設置された特別な公園である。実は、このエリアには元々マサイ族が多数住んでいて、この人達を移住させることができなかったために、この方式を考えたそうである。マサイは遊牧民であるから、公園の中に野生の動物と牛や山羊を追ったマサイが同居している姿は、奇妙に移るが、考えて見ると、野生動物だけという方が不自然で、むしろこの姿が昔のアフリカの姿だったのではないだろうか。ンゴロンゴロCAは北部でセレンゲッティーナショナルパークと隣接しているため、時期になると170万頭ものヌーの大群の移動が見られるそうだが、今の時期は北に移動して残っている物だけである。それでも数えられないほどのヌーの群が見られた。またこのエリアの中には、180万年まえの人類の祖先ジンジャントロプスの頭蓋骨が発見された、世界的に有名な遺跡オールドバイジョージがある。

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 ここで、国立公園の機械整備の専門家、稲見さんの職場を訪問した、アフリカに20年の経験を持つ大ベテランで、気負いのない自然体での指導が親しみを覚えた、稲見さんの姿勢は物ではなく技術を移転する事に中心をおいているため、値段の安い木の棚板一つにしても、日本の援助で買えばすぐ買えるのだが時間をかけても、あえて現地の予算を出させる方向で自助努力を引き出す努力をしていた。専門家がいなくなった後、物であればいずれ形はなくなるが、技術は続いて行く、本当に現地の事を考えたやり方だと思った。

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国立公園の長官が、いままでの英国流のトップダウン式のシステムに対して、日本式は上下のコミニケーションがあり良いとの評価をしてくれたがこれも稲見さんのやり方が認められているからこその発言だろう。トップダウン方式は上の者が変われば下の者もこれにあわせ変わらずを得ず、技術が定着しずらい。それに対して、コミュニケーションをとりながら進む方向は確実に技術が下の者に定着していくため、技術移転としてはすばらしい方法だろう。


7/28(日)    レイクマニュアラ国立公園視察

 ンゴロンゴロCAから更に50キロほど南に位置するマニュアラ湖の周りに広がる広大な国立公園で、ヌーの群や象カバ、キリンと次々に出会う程、動物の数は多く、5メートルほどの手が届きそうな距離のところをアフリカ象が横切ったり、急に車のすぐ横に2メートルもあるコブラが現れたりと動物がよく保護されているというのが実感であった。残念なことといえば、ライオンやレオパード等の大型肉食獣に会えなかった事であるが、突然ヌーの大群が土埃をあげて走り始めた最後尾をハイエナのような小型の肉食獣が追いかけて、一頭のヌーを倒す迄を目前に見ることができた。湖の浅瀬には辺り一面に無数のフラミンゴが羽を休めていてまるでピンクの絨毯を敷き詰めたようで美しかった。

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7/29(午前)   モシテクニカルスクール訪問

 モシでは最近、青年海外協力隊員が、夜、家に侵入してきた強盗に顔を合わせ蛮刀で顔を斬りつけられ、大けがをしたという事件が起こって治安が悪いという話だったので、緊張した訪問であった。この学校は4年制の技術学校で生徒は主に内陸のビクトリア湖周辺の普通の農家の子息を預かっている寮制である。今はすでに新学期が始まっているのだが、学校の予算不足で経営が厳しく授業料を持ってこないと学校に入れないため、お金の用意できない生徒がまだ集まっていないので授業はまだ始まっていなかった。教室はボロボロで、満足な机いすはなく、黒板もコンクリートに黒いペンキを塗っただけの粗末な物だった。しかも、テクニカルスクールなのに実習機械は博物館にでもありそうな古さでほとんど満足に動きそうなものはなく、実習も黒板で教えるという最悪の教育環境であった。図学を教えている協力隊員の小宮路さんの教室などは角で窓もなく暗いのだが、電気もつかない中で教えているそうだ。しかし、自習をしている生徒のノートを見せてもらったが、レベルは高く実によくノートを取り勉強しているという印象を持った。教育環境は最悪でも学問をしたいという意欲は旺盛で、日本の様に教育環境はすばらしくても、生徒の学ぼうとする意欲が薄れてきている現状と比べると何とも複雑な気持ちになるのである。

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7/29(午後)  KATC(農業技協プロジェクト)訪問

 日本の援助でできた、灌漑用水によってトウモロコシから稲作に転換して、1年で家が建つほどの収入が得られ、生活改善が目に見える早さで進んでいる。それを見たプロジェクト外の農家も、指導を受けたわけではないのに同じように田圃を作り日本式の農法が自然拡大している様子を見た。少数の富農を作るという問題もあろうが、自助努力を引き出した援助として評価できる。今後は、ランニングコストのかからない有機農法、例えばアゾラという浮き草を使って窒素を固定させたり、アヒルに雑草を食べさせたりというような方法を指導し全国に広げていく計画ということであった。

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7/30(午前)  サメ林業プロジェクト訪問

 現地の気候が年間雨量の限界点500ミリを下回り、さらに苗が育たない程の強風が吹くという悪条件でプロジェクトサイトの選定に問題がありここでの植林に大きな経済効果は期待できない、現地への林業普及の観点からは失敗だが、この失敗を生かすため今やろうとしていることは社会林業の手法を確率する事に重点を置いている。その為に、住民がなにを望んでいるのか知るため村を周りケアすると共に交流を深めよりきめの細かい指導を行っている。
 このような自然が相手の援助に関しては人間の努力だけではうまく行かず大きな援助をしたがそれが失敗をする事も当然あるだろう。問題は、その失敗を認めて、隠さず公開し
批判を仰ぎその中から次に失敗しない方法をつかむことである。ここでは、トップダウンの方式から住民のニーズをつかんだ社会林業へと大きく方向転換を目指している。ぜひ住民の生活に根ざした援助の方向をつかんでほしい。

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7/30(午後)  マサイ族の村訪問

 林業プロジェクトが指導をしているマサイ族の伝統的な村を訪問した、サバンナの中の道なき道を、まるでパリダカールラリーのように1時間以上走った場所で、町との交流はほとんどないと思われる場所である。マサイは本来放牧生活で定住しないのだが、ここでは援助でできた井戸のそばに定住している。そこに苗を配布してケアを続けているサイトの一つである。村長が親しみやすく立派な方で、突然訪問した私達を村をあげて歓迎してくれて伝統的な土の家の中も喜んで見せてくれた、私達にして見れば貧しい家だが、村長は誇りを持って自慢げに見せてくれた、そしてここで生活している女の子たちの屈託のない明るさに、ここにはここの文化があり、生活がある、そしてそれを私達の価値観で判断してはならないということがよくわかった。
 どこの援助かはわからないが、手押しポンプ井戸はこの村に取ってはすばらしい贈り物だったことがわかる。訪問している間中いつも誰かが利用していて、ここは村の中心ではないのだがここが中心に生活が行われているといった感じだ。水くみは女の仕事と決まっている伝統社会構造のなかで、女性を重労働から解放すると同時に衛生面での改善とこの場所が井戸端としてすばらしいコミュニケーションスペースになっているのだ。

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7/31(午前)  タンガ母子保健プロジェクト

 母親と5歳以下の子供達をどうしたら死なないようにできるかがこのプロジェクトの目的である。妊産婦の30パーセント以上がHIVウイルスの陽性者であるという驚くべき状況だが、それ以上にマラリア、呼吸器病、下痢といった日本では考えられないような普通の病気での死者が志望原因のワースト3という現状ではエイズよりももっと基本的な医療、衛生の問題がやま積みということである。それだけに、母子保健のサービス拡充、技術の向上が望まれる。しかし国は農業、工業開発に力を入れているため保健衛生は最後に回される。そのため予算がほとんど回ってこないのがここの問題である。サイトの村で住民 代表との話し合いも持ったがここでの住民の訴えの主な物は、水道と井戸の改善、道路交通手段の改善、教育、教育設備の改善、健康、保健サービスの抜本的な改善と基本的で切実なものばかりであった。いわゆる社会インフラの整備が最も必要なのである。

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7/31(午後)  ガラノスセカンダリースクール

 二人の青年海外協力隊の理数科教師が配属されている農業系のセカンダリースクールである。生徒数500人の学校だが、モシのテクニカルスクールに比べ学校の設備はしっかりしている。元々、政府からの予算がこなかったりと、学校に回される予算は後に回されるため学校は慢性的な予算不足に陥いって設備は悪くなる一方なのだが、ここでは農業系ということもあって校内の敷地でトウモロコシを自給したり、家畜を飼って売却して利益をあげたり、寮制だったところを、通学制に変えて寮費節約を計ったりと積極的な自助努力をはかっている。そのような環境のなかで、ここでは、教師のアルバイトは当然と言った雰囲気で、学校の敷地を利用して給与の数倍もの利益をあげている教師もいるそうだ。教師の給与不払い等で生活ができない現状ではそうした考え方も当然ということだろうか。
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 ここで、待望の授業参観ができた。黒板を使うだけの授業だが、生徒の集中度はすばらしく、何人も先生が当てるのだが、誰でも当てられるとすぐに起立して、必ず何か答える、間違っている答えも多いのだがそれなりに答えるということは、生徒が自分なりに考え授業に参加している事であり、久しぶりに良い授業を見せてもらったという感じであった。

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8/1(午前)   パンガニ漁業指導センター、漁具漁法協力隊員訪問

 この漁業トレーニングセンターでは漁民を対象とした環境を守る漁法の指導、トレーニングを行っている。現地では、手軽に手に入るダイナマイトを使ってのダイナマイト漁法や毒物を使った漁法など、珊瑚礁の破壊や根こそぎ取ってしまう環境破壊の漁法が行われているため、それらに頼らない正しい漁法を指導しているのである。18歳から35歳までの漁師をここに受け入れて宿泊させながらトレーニングを行うのであるが、宿舎は汚く衛生面では最低の環境で、トレーニングのエンジンや冷凍設備など満足に動くものはほとんどなく、指導船ですら船首のFRPが欠けていて波で海水が入って当然という状況であった。この理由はやはり政府からの予算がほとんどこない事で、結局自分たちで漁獲を販売するなどして利益をあげないと続けて行くことも難しい現状に見えた。
 ただ、この悲観的な状況のなかで森島青年協力隊員が現地の母子家庭の20歳の女性の生活を助けようと、休みを利用して日本円で1000円程度の出費で土で小さな喫茶店をつくり、彼女がそこで働いて月に公務員の給与と同じだけの利益をあげて彼女を自立させていた姿にさわやかさを感じた。援助とはお金や技術だけではなく、このような住民との密接な交流のなかで生まれた小さな協力も大きく評価されて良いのではないだろうか。
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8/2(午前)   国立ムヒンビリ病院訪問

 母子保健プロジェクトの中心的なサイトである。ここでは医者の専門家を中心に小児科、一般病棟の診療と新たに臨床検査棟を建てて、検査に裏付けられた治療の普及を指導している。現地の医者の知識は日本の医者よりも高いのだが、国内に大学が一校しかなく医者の絶対数が全く足りない現状で、地方では医者の免許をもった者が診療するのはまれと言う現状ということだった。
 とはいえ、栄養不良が根底にあるため、この国では下痢ですぐに体重が下がり、命に関わる症状になる程で、生活改善などベーシックな問題を一つずつクリヤーしていく方向が必要である。しかし、今まで、無料だった診療費を去年から200シル(40円)の受付料を取るようになったそうだが、このわずかのお金すら払えない、貧困がおおきな原因である。日本の医師が診療をしているだけでは焼け石に水という感じでやはり、優秀な現地の医者やアシスタントメディカルオフィサーの数を増やして全国に配置するような方向とインフラ整備を同時に進める事が必要なのではないだろうか。

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 最後に、全体を通して感じたことはGNPの一人当たりの額が日本円にして1万円ぐらいを推移しているいわゆる最貧国と呼ばれるタンザニアに援助国である日本はいったい何をする事が重要なのか考えさせられた訪問であった。巨額の日本の援助もこのタンザニアでは砂漠に水をまくようにあっと言う間に吸い込まれ消えていってしまう、いわゆる手の付けようがない状態といったら良いのだろうか、治安が悪くなってきているのも、貧富の差が拡大してきている事に起因するのではないだろうか。
 貧富の差を広げずに全体のレベルをあげていく事が必要なのだがそれはまさに難題である。
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ダルエスサラームで民芸品のマコンデ彫刻を売っているマコンデ村に行ったとき、土産物屋の店主やぶらぶらしている人達と話していると、日本人と見るとコウノイケとかカシマとか言う言葉がでてくるこれは、日本の鴻池組や鹿島建設が市内で道路建設を請け負ったからなのである、その時土木労働者として雇われた事がよほど良かったらしく今でも忘れられないのである。そして彼らは、私達にも仕事をくれ、あるいは仕事を紹介しろと言ってくるのである。産業が発達しないので仕事がない、当然援助に頼る生活が続き自助努力は活性化されない、政府はまた新しいドナー国を探すといった悪循環が続いているのであろう。
 このような悪環境の中で、モシの稲作プロジェクトをの様に着実に生活向上に役だった成果をあげたり、観光資源に力を入れなくてはならない状況の中で地味地に公園局を支えている稲見専門家や、どんなに国の予算がないとしても母子の命を守るためギリギリの活動を続けている母子保健プロジェクト、そして母子家庭の生活をアイデアと努力で支えた森島協力隊員等現地で援助に関わる人達が持ち得る能力を惜しみなくつぎ込んでいる姿には感動した。きっとこの努力が近い将来大きく実を結ぶことを祈りながら、タンザニアを後にした。


篠崎高校 斉藤宏 hiroshi saito 編集

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